政府の借金は、お金の発行の仕組みの当然の帰結である
まずは事実をご覧ください。これは1980年から2018年までの日本のM2(お金の量):青、銀行貸出残高:緑、GDP:茶、国債残高:赤のグラフです(図1)。
図1
全てのお金が誰かの借金であること、そして、その全てに金利がかかるゆえに、お金(=誰かの借金)が増え続けなければならないことは既に説明しました。そして、増え続けるお金とバランスを取るためには、実際の価値も増え続けなければならない。つまり、これはお金(借金)とGDPが永遠に増え続けなければ持続しない仕組みであるということが、「私たちが知るべき最も重要な真実」ということです。そして、このグラフは、実際にどうなったかを示しています。M2を見ればわかる通り、確かにお金は増え続けています。そうならなければ破綻が破綻を呼ぶ仕組みだからです。しかし、バブル崩壊以降、GDPも全く増えず、銀行の貸出残高(民間の借金)は100兆円以上も減りました。本来はその分のお金が消えているはずです。しかし、全体のお金は増え続けた。どうやってお金(M2)は増え続けたのでしょう?答えは国債残高を見れば明らかです。誰かが借金をしなければお金が増えない仕組みの中、政府がその借金を肩代わりする形でお金を増やしたのです。永遠に続く経済成長も無限に増え続ける民間融資もあり得ない中、最後まで借り続けられるのは政府だけだからです。これは財政収支の問題ではありません。政府のムダ使いや税収不足の問題ではないのです。いずれこうなることは万国共通、持続不可能なお金の発行の仕組みの当然の帰結ということです。
政府の借金がお金を発行する仕組み
皆さんは不思議に思うかもしれません。何故、政府の借金がお金の発行になるのか?その仕組みを説明します。図2をご覧ください。平成29年度の予算案によると、政府の税収は58兆円、その他収入5兆円を合わせても63兆円なの対し、支出は74兆円と11兆円足りません。さらに今までの借金の利息も9兆円必要なため、合わせて20兆円マイナスです(図2の中央部分)。この20兆円をどうしているかと言うと、足りない部分は新たな国債を発行し、それを銀行に買わせて作り出します。すなわち、皆さんの預金で買うわけですが、信用創造の仕組みで説明した通り、皆さんの預金通帳の残高は減ることなく、新たなお金を銀行が作っているということになります。つまり、通常銀行が民間に対して行う信用創造を、政府に対して行なっていることになります。これにより、政府の国債の残高は20兆円増え、845兆円から865兆円になります。国債償還分の14兆円は、満期を迎えた国債を一旦償還し、それを新たな国債で借り換えて払うので、差し引きゼロ。国債残高は変わりません。
図2
一方、この一連の流れを皆さん側から見るとどうなるか。まず、皆さんの29年度末のお金の総額(M2)は約990兆円で、ここから税収の58兆円は支払われます。また、その他収入5兆円も国有地の売却費用や賃借料だと仮定すると、これも民間の預貯金から支払われますから、合計63兆円が皆さんのお金から消えることになります。これに対し、政府支出の74兆円は民間に支払われます。公務員の給与、政府事業の支払いなどとしてです。すると、税金で払った以上に政府が民間に支払うので、差し引き11兆円、皆さんのお金が増えることになります。また、利息の9兆円も、国債を保有している機関投資家(銀行、生命保険、損害保険、年金運用基金など)の運用益として、それらに資産を預けている民間の誰かに間接的に支払われます。つまり、11兆円+9兆円=20兆円、民間の預貯金が増えることになります。この20兆円と、国債で賄った20兆円が同じなのは決して偶然ではありません。政府が足りない分国債を発行し、それを銀行が買うことによって新たなお金を作り、その分余計に使って民間に渡すから、皆さんの預貯金がその分増えるということです。要するに、この方法により、政府の借金と皆さんの預貯金は並行して増える。だから、「政府の借金=お金の発行」になるのです。繰り返しになりますが、現代のお金は全て誰かの借金です。それが信用創造の本質であり、今や皆さんのお金のほとんどは、政府の借金でできているという、これは厳然たる事実なのです。
政府の借金を税金で返すとどうなるか?
逆もまた真なりです。世の中の借金が減れば、お金は減ります。もし今の仕組みのまま、政府の借金を全て税金で返したらどうなるでしょう?試しに税収が100兆円、支出を50兆円として考えてみましょう(図3)。すると、その他収入も合わせて105兆円の収入に対し、支出が50兆円ですから55兆円余ります。利息の9兆円を払ってもまだ46兆円余りますから、これを右の国債返済に充て、国債残高は845兆円から799兆円に減ります。一方、皆さんの側から見るとどうでしょう?左側を見るとわかる通り、100兆円の税収ということは、その分のお金が皆さんの現金預貯金から徴収されますから、M2(皆さんのお金)は100兆円減り、さらに5兆円のその他収入も皆さんが払えば、合計105兆円のマイナス。これに対し、政府支出で50兆円戻ってきても55兆円のマイナス。ここに利息の9兆円が加わっても差し引き46兆円が消えることになります。そして、もちろんこの46兆円と、先ほどの国債返済の46兆円が同じなのは偶然ではありません。政府の借金で作り出したお金は、政府の借金を返せば消えるということです。これを毎年続ければ、確かに20年ほどで政府の借金はなくなりますが、皆さんのお金がそもそも990兆円しかないところから、政府の借金845兆円(元本)+利息を支払えば、皆さんのお金は全て消えるということです。恐らく利息分は足りなくなるでしょう。そんなことがあり得ると思いますか?
図3
もし今の仕組みのまま、税金で政府の借金を返す方法が唯一あるとすれば、それは理論上こういうことになります。政府の借金を全て返せば、ほとんど全てのお金が消えるわけですから、そうならないためには、誰か他の人が借金を肩代わりしなければならない。つまり、政府の借金に相当する額の民間融資が新たに生まれなければならないということです。しかし、実際に1990年以降、銀行貸出残高が増えるどころか100兆以上も減らした事実から考えれば、民間融資が政府の借金分、つまり845兆円も増えるなどということがあり得ないことは、誰にでもわかることです。もしそれを真剣に主張する人がいたとすれば、それは仕組みを理解していないか、我々を騙そうとしているかのどちらかです。問題の根本は税収と政府支出のバランスではなく、お金の発行の仕組みそのものであり、今こそその本質に切り込んだ政策が必要なのです。でなければ、国会の予算論議は全て出発点から間違うことになります。フェア党はその根本から変えようとする唯一無二の政党です。